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烈嶼南山頭特有の玄武岩と緑石槽の景観

日付
2020-03-23
金門地区の海岸は、早くから軍事管制が敷かれていたため、一般市民が近づくことは困難であった。近年、戦地として政治的役割が解かれたことにより、変化に富んだ海岸の景観も次第に観光客に愛される「秘境」へと変化しつつある。なかでも、烈嶼南山頭の海岸は、何層にも折り重なった独特な地質の景観をもち、更に、毎年の春の初めには、侵食岩を覆いつくすように生長した緑色の藻がより鮮やかな眺めをつくり出す。2020年の3月7日から8日まで、国立台湾大学の林俊全教授率いる社団法人台湾地質公園学会は「第1期第13回理事・監査役・幹部合同会議」を金門で開催した。その際、出席者達は南山頭の独特な地質の景観を目の当たりにして、その景観が生み出す世界観に対して最大級の賛辞を贈った。

玄武岩と戦争遺跡が織りなす景観は、まるで自然の教室のようである。烈嶼青岐村南山頭海岸の砂岩には生物の活動の痕跡が化石として残されており(生痕化石)、高くそびえる壁は、列をなす柱状の玄武岩と風化したラテライトからできている。長期にわたる風化作用によって、岩石と土壌の表面は、黄色、赤色、茶色等様々な色を呈しており、また、玄武岩特有の玉ねぎ状風化も見られる。こうした構造と色彩の変化に富んだ地質現象と景観は、潮の満ち引きの合間に、素晴らしい自然の姿を見せてくれる。これに加えて、金馬特有の戦争遺跡の存在もある。このエリアは、烈嶼島最南端の海岸を管轄すると共に、周囲の大膽島、二膽島及び復興嶼等の離島を防衛・支援しており、大規模な軍営やトーチカが築かれ、自然の景観と人文史跡・遺跡が相まって独特な景観を生み出している。


季節限定の一面の緑:緑石槽の景観
烈嶼南山頭海岸南西の砂岩は、地殻の隆起によって海面に露出しており、風化作用を受けて、砂岩中の酸化鉄がまばらに表面に姿を見せ、幾つもの茶色の筋がある風化の痕(風化紋)を形成すると共に、その下に保存されてきた生痕化石を露出させている。また、冬に東北から吹く季節風がつくり出す砂礫を含む荒波によって、長年にわたって洗い流されることで、柔らかな部分が浸食される一方で比較的硬い部分が残り、海岸から海へと北西から南東へ伸びる海食溝と海食台が次第に形成され、生物が付着しやすい表面ができあがっている。春になって次第に暖かくなると、豊かな栄養塩を含んだ温かな海水が上昇し、アオサやスジアオノリ等の緑色藻類は、養分を吸収して急速に生長する。様々な自然条件が組み合わさって、この地区の潮間帯の海食溝と海食台には、一面の緑の絨毯が広がり、潮が引いたその時、南山頭海岸は生き生きとした姿を見せてくる。また、合間から見える砂岩に描かれた優美な茶色の風化紋は、一層の美しさを感じさせてくれる。しかし、この美しい景色は季節限定なのである。夏が近づき、うだるような暑さになると、侵食岩の上一面に広がる海藻達は、灼熱の太陽には敵わず、次第に身を潜め、翌年再び海岸を埋め尽くす日を待つことになる。



玄武岩と緑石槽が織りなす地形の景観
僅か数百メートルの南山頭海岸には、玄武岩の柱状節理及び玉ねぎ状風化、砂岩表面の茶色の風化紋、生痕化石等、様々な色彩と幾重にも重なった構造が生み出す変化に富んだ景観が見られる。この独特な玄武岩地質の景観を緑で覆う緑石槽は、季節限定で潮汐の変化によってひっそりと姿を現すため、これまでほとんど知られていなかった。近年、戦地として政治的役割が解かれ、海岸の環境教育が普及したことにより、玄武岩と緑石槽が織りなす地形の景観は、次第に評判となった。これは、台湾、そして全世界にとって大切な景観であり、大地が生み出した奇跡とも言える。観光客の皆さんにも、我々と共に鑑賞し、保護に取り組んでいただきたい。

写真:緑藻と砂岩表面の茶色の紋様が変化に富んだ色彩。
写真:緑石槽、海食台、軍事遺跡及び柱状の玄武岩が織りなす景色。
写真:玄武岩の柱状節理と玉ねぎ状風化。